2006.10.30 22:03
お茶の実がついている。
形は不揃いで瘤みたいな感じだ。
マタタビの実に似た感じだがそれほど不揃いではない。
あれは蠱えいといって虫が入って瘤に成るのでひどく不揃いだ。
北山時雨に濡れて、
芹生の里のマタタビは実り、葉を白く変えただろうか。
ハシバミも実っただろうか。
その傍にあった継子(ママコ)の手
--ハナイカダは今も立っているだろうか。
妻を亡くして自分を見失い、
逃亡者のように、
山里にひとり行き着いた。
森の中に逃れた男は
名前さえ樹々の暗がりに隠した。
三年の間、山は黙って男を包んでくれた。
地の果ての寂しさが、人を癒やす。
ヤマネやテンやフクロウが
訪ねてくるだけの
言葉のない時の流れ
森を抜けるせせらぎの呟きを
叶えられない約束として聞く
明け暮れ
だがいつのまにか
水と風と闇が
いのちを返してくれたのだった…
京北の山里の暮らしを
漠然と想い出させてくれた、
ひとつふたつの木の実。
晩秋の森の薄暗がりに見つけた
お茶の花とその実。
ポケットにそっと実を滑らせて持って帰る。
食べられるものではないのだけれど。
弾けて種が覗くまで
テーブルの上に置いて
楽しみとしよう。
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