プライムリゾート賢島という名前のホテル。三度目の滞在だったか…
料理はまぁフランス料理プラス地場海鮮材料という組み合わせでまずまずか。
料理の紹介は別のところにする。
つい とも
終生の朋友と湯に居て妻の年暮るる
わ い ひととせ おゆ
湧き出でて一歳を問うか御湯の声
為有 李商隠
為 有 雲 屏 無 限 嬌
鳳 城 寒 尽 怕 春 宵
無 端 嫁 得 金 龜 婿
辜 負 香 衾 事 早 朝
wèi yǒu yún bǐng wú xiàn jiāo
fēng chéng hán jǐn pà chūn xiāo
wú duān jià dé jīn guī xù
gū fù xiāng qīn shì zǎo cháo
雲屏(うんぺい)
雲母を散らしたあでやかな屏風。
実は美人をいう間接の表現。
嬌(きょう)
女性のコケットリー。愛嬌。
鳳城(ほうじょう)
鳳凰の来る城(まち)=都、京城。
具体的には長安。九重ともいう。
寒尽きて
冬がおわっって。
春宵を怕る
夜の短いことを怕(おそ)る。困るなぁという気分。
端なくも
思いがけなく。
金亀
高官にのみ与えられた金の亀形の帯留め。
香衾(こうきん)
香を焚き込めたいい匂いのする掛布団。
辜負(こふ)
そむくこと。背にして。
事(こと)とする
もっぱらにすること。
雲屏に無限の嬌あるが為に
鳳城に寒尽きて、春宵を怕る。
端なくも金亀の婿に 嫁するを得たるも
香衾を辜負して、早朝を事とせんとは。
女の器量が十分に備わっているせいで
花の都に春が来たのに夜の短さを憂えねばならぬ。
思いもかけず金亀を帯びる身分の高官の妻となったが
なんということか
夫は香しいベッドを顧みず早朝に出仕してしまうなんて
閨怨詩の一種といえようか。
うら若い女性の孤独と哀怨の風情を詠う。
当て外れな状況として孤独な閨(ねや)を描写する。
道具立ては貴重な装身具の金亀や香衾。
季節は春情の季節、春の夜。
宵は夕方でなく夜をいう字。
春宵の交歓と早朝の出仕の対比が趣向としてあるか。
鳳城は典故がある。杜甫の詩などにもでてくる。
春の長安の悩ましい夜の風情を詠っているのだが
李商隠は一筋縄ではいかない詩人で
この詩も政治的暗喩をもっているというひともあるらしい。
晩唐の詩は繊細華麗あるいは優艶。退廃と散逸に近づいているようだ。すこし難解な詩風。
本を並べて参照しながら作詞したことから李商隠は獺祭魚と綽名された。獺(カワウソ)がとった魚を岩に並べ神祭りしてから食べるように見える習性を獺祭魚と言い、書物に埋没する人士を獺祭の人というようになった。最初の獺祭魚が李商隠である。子規が獺祭書屋主人と号したところから9月19日の正岡子規の命日を獺祭忌という。日本の獺祭魚詩人は正岡子規だ。
熱帯夜に身を起こして
方形の薄闇 窓の方をみた
脇の下を伝う汗を感じながら
また目をとじると
大きな大きな夜空から
沈黙が下りてくる
何かが立ち去った
気配に
目を覚まし
それが何かを
言い当てるために
わたしはこうして 目をとじた
ことばでは言えず
足ではたどり着けない
場所へ
今さっき立ち去ったもの
それを
わたしは煙のように 追う
行かないでくれ!
と 叫んだ あの夜が
もういちど
深淵から漏れ出したように
あたりに広がってくる
みずの みずいろ
そらの そらいろ
彷徨うて 行くよ
と歌った
むかしのぼくの影が
駆け上った空
どこに
その透明な蝶は 舞うのか
泣くわたしのからだから
抜け出した百千の貴女のキスが
群舞する空は
どこ
裸足のくるぶしに
蛍ほどの灯り曳いて
亡者の貴女は
いまも居る
群星の映る水のそば
いつしか庭石に
腰を下ろして歌っている
33 たす 33
それは わたし
いちど死んで
同じだけ
もういちど生きた
立ち去ったのは
それは
わたし
残されたのは
ゼロ
66 たす ゼロ
ゼロになった
わたし
汗にまみれた
裸のこころ
生まれたばかりの
しろねずみ………
*