2013年10月27日日曜日

俳句 : 鳥兜






鳥兜最後に暮るヽ村はずれ

短歌: 野菊


 道すがら 野菊の風情と云はれたる
 君を憶ひぬ ひとむら咲けり


 痛みもちて物思ふ道に しろじろと
 野菊の咲けば われきはまれり

2013年10月23日水曜日

俳句:破殻の制御さるる身雨そぼろ





メルトダウン抱えて「制御」はないよ。


小さく弱い生き物ほど影響は深刻なんだ。

我から「破殻」になって詠んでみます。

    破殻の制御さるる身雨そぼろ

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2013年10月21日月曜日

回顧旧情  -羅馬-





西施の笑まひか 花のやう 
春はみすみす 目のあたり
 
驟り雨する 河づつみ 
目に潤はしき ねこ柳
 
両人 互いを懐ひつつ 
いま別れゆく ローマかな
 
きっと 忘るな わがかげを
佳き酒酌みしその日々も 

 

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2013年10月20日日曜日

漢詩  無題


 青 裙 紅 玉 若 荷 花
 

 落 托 江 湖 多 酒 笳
 

 郷 里 帰 来 辛 処 世
 

 曙 光 私 転 暖 残 涯


  青裙 紅玉 荷花の若し
 

  江湖に 落托して 酒笳 多し
 

  郷里に 帰来するも 処世 辛し
 

  曙光 私かに 転じて 残涯を 暖む


 青裙 緑のスカート
 紅玉 生き生きした玉のような肌
 荷花 ハスの花
 落托 人目を憚らず自由に振舞う
 江湖 世間のこと
 酒笳 酒と笛 宴の比喩
 処世 生きること
 残涯 残り少ない人生、またその身の上
 私  ひそかに




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俳句 つゆくさ


 たはむれし百夜草の夜や指のあを



2013年10月18日金曜日

秋思


垂白文章猶未成      幽襟独嘯佇蓬生      凄風敲戸帰鴉乱      桑葉翩翻揺月明


























秋思

    垂白文章猶未成

    幽襟独嘯佇蓬生

    凄風敲戸帰鴉乱

    桑葉翩翻揺月明

    垂白ナルモ文章猶未ダ成ラズ

    幽襟独リ嘯イテ蓬生ニ佇ズム

    凄風戸ヲ敲キ帰鴉乱レ

    桑葉翩翻タリ 月明ニ揺ル

垂白 髪が白くなっていること 老いを象徴
文章 「文章は経国の大業、不朽の盛事なり」「文は人なり」
幽襟 胸に秘めた深い思いのこと
蓬生 よもぎふ 奥まった処の意味で使う
凄風 冷たく吹き荒ぶ風
帰鴉 巣に帰るカラス
桑葉 桑の樹とその枝葉

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2013年10月11日金曜日

玄米粥



以粗糲為好餌

壮時些誤俗言中  壮時 些か誤る 俗言の中
嘗為以膏常作躬  嘗て膏を以って常に躬を作ると為す
糲粥晨炊得滋養  糲粥 晨に炊げば滋養を得て
十匙一覚賞天功  十匙 一覚 天功を賞す

わかいとき ちょっと うのみにしたものだ
あぶらみこそが からだを つくると
げんまいの かゆ あさに かしげば じようがついて
じゅっさじ はこべば ありがたさが わかる 


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2013年10月8日火曜日

村社置酒


村社置酒

探歴鳴蝉暮鳥音
追踪白兎雪花林
星霜老去山河在
耳順座中霑酔深




2013年10月6日日曜日

賽社に過ぎる

街にも村にも秋の風情が見られ郷愁を掻き立てられます。
旅愁を題に漢詩を一首作りました。

賽社(さいしゃ)は秋の実りの収穫を感謝する祭。秋祭り。賽は「報いる」の意味。<賽社に過ぎる>秋祭りに立ち寄ること。客愁(かくしゅう)は旅の愁い。
家山(かざん)は故郷の山。
<意訳>

旅人の想いは遠く故郷へとつながって行きます。

秋の村祭りが賑やかに響いて村人たちは皆笑顔です。

楓の木にもう赤く色づいた葉を見つけました。

空には秋の叢雲がいっぱいでもう帰心一途になってしまいます。





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2013年10月1日火曜日

平家公達流亡之図に題す



 平家公達流亡之図に題す

孤鞍 遠く望む 半輪の秋

風笛 商声 散じ未だ休まず

異境の紅顔 残鬢の客

故情 忘じ難きを 那邊にか流る


  秋の夜 半月の懸かる天を仰ぐ一騎

  強風が高い音を起て吹きつのる

  異郷を落ちいく若者の鬢はほつれて

  昔の恩情は忘れがたいものの、
  何処へと流れていくこの身なのか



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2013年9月26日木曜日

漢詩 : 懐旧有感



人生有漏未離縁  ○○●●●○○
空讀遺篇不可眠  ○●○○●●○
一夜寒蛩弦月下  ○●○○○●●
孤山早暁在吟邊  ○○●●●○○


人生有漏なるも 未だ縁を離れず
空しく遺篇を讀んで 眠るべからず
一夜 寒蛩 弦月の下
孤山 早暁 吟邊に在り

【自注】

 旧友を思う詩をもうひとつ。

 最近死去した一人の詩人を想って作詩しました。
 孤独に耐え抜いたという意味で剛毅なひとでした。
 三冊余の詩集を残しました。
 その詩集を開いて読みながら思いは過去へ。

 ベトナム戦争など激動する世界を見つめながら
 まっすぐに生きて行きたいという願い、その志を記した詩の数々。

 世に広くは知られる詩人ではなかった。
 けれども私にはずっと忘れずにいたい人と作品であり続けるでしょう。

:人生有漏: 仏教のいう有漏とは存在の有限性、不完全性、無常性でしょう。
:蛩: こおろぎ、 寒
蛩で晩秋から冬の蟋蟀を表します。
:絃: いと、 楽器の弦。 月如絃は月がきわめて細くなっている情景。

さて出来栄えはどうだろう。平仄や二四不同ニ六対などはOKか。
前半二句で人の状況後半二句で自然光景をという構図にはなっているが。


漢詩人の友人の助言を得て手直ししたものです。

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2013年9月25日水曜日

俳句と漢詩 : 夕暮れの灯の下で秋を思う

渺渺として美人は 客夢に残す  星は移り落托して 燈を挑ぐるも寒し  旧盟未だ尽きずして 江山杳かなり  懐に氷心を抱きて 長く一歎す

こんにちは。晴れた一日になりそうです。

俳句と漢詩を同じモチーフで作り並べるという試みをして見ました。
漢詩の平仄は合っているはずですが他は自信ないのです。
俳句は新涼という季語を使いました。

新涼には、新しい、新鮮なというニュアンスがありますが、体に感じる涼気に気付くときの感じがこめられた言葉だ思います。

 新涼や胸は古傷有りと云ふ

自分では日常に埋没して日を送っていても、
季節の変わり目のひんやりした肌触りに秋を感じるとき
様々な人生行路の出来事を思い返したりします。

胸に古傷、ではなく胸が「古傷有り」と云うのです。
皆さんはそうでないかもしれませんが、
一つや二つ秋風に沁みて思い出される傷がありませんか?

漢詩もそういう情景を作ってみたのです。

渺渺(びょうびょう)と云うのは広々としておぼろなこと。
客夢は異郷にあって見る夢、旅人の夢。カクムとも読む。
残すはザンスと読む。ノコスではない。
星移は星霜に同じ。年月のたつこと。
落托は落ちぶれること。
挑燈は灯をかかげること。
旧盟は古い誓い、約束のこと。男女の契りの言葉でもある。
江山はここでは故郷の山河のイメージとして置きました。
杳(よう)ははるかに。
氷心は真心、清い心、澄みきった心。

 晩燈愁思

 渺渺美人客夢に残す
 星移落托、挑燈寒し
 旧盟未だ尽きず、江山杳かなり
 懐抱氷心、長一歎


2013年9月19日木曜日

俳句 : 台風

 


夜半中台風を聴き茶を啜る

台風の丘は一軒夜を怖る

道に被り出水は夜の田へ向かう

夜の声出水の村のまっ二つ

こゑ止まぬ夜更けの野分缶詰で

野分去り妻が顔拭く白タオル

台風の過ぎしタオルのあたたかや






2013年9月17日火曜日

漢詩 : 送別詩




一別衰翁思  一別 衰翁思う
白雲送客悲  白雲 送客の悲しきを
晴風吹露菊  晴風 露菊を吹けば
落雁水霄涯  雁は落つ 水霄の涯


霄=「しょう」空のこと



あっさり別れたこの別れ 老い衰えてのもの思い

白い雲へ客を送り ただ悲しむだけなのだ

晴れた日で 風は菊の露を溢して吹き

雁は落ちていく 遠い空と水の涯まで


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2013年9月16日月曜日

漢詩 : 暈月愁思



風催帰燕過人閒

水映紅霞是往還

故侶故郷不息憶

秋声暈月対愁顔


風は帰燕を催(うなが)し 人閒に過(よぎ)る

水は紅霞を映し 是(ここ)に往還

故侶、 故郷   憶えば息まず

秋声、 暈月   愁顔に対す


燕に帰るをうながして
風は世間に吹き通る
夕焼け空の川に映え
ここに往還 あるばかり
ひとぞ 故郷ぞ 憶わるれ
尽きぬ思いの愁い顔
虫鳴く声に
月の暈

2013年9月13日金曜日

俳句 : 夜長の時期になって



 詩を賦すや誰に夜長の酒熱き

 きみいづこ花野のはづれ丘のうへ

 葛のはなこぼれて静か吾はあり

 数うれば蛾は三匹の夜学の燈



漢詩 :  観月偶感 


今回は頭から作っていった起承転結の順で。難しかった。
それで意を尽くした終わり方ではなかった。それが反省点。


 蝋涙香烟形影思

 多年宿志在天涯

 如何閉戸悲塵世

 詩骨無端孤月窺 


 



2013年9月8日日曜日

魚玄機 送別其のニ






送別 其二 魚玄機

水 柔 逐 器 知 難 定 

雲 出 無 心 肯 再 帰 

惆 悵 春 風 楚 江 暮
 
鴛 鴦 一 双 失 群 飛 



水は柔かに器を逐うも 定め難きを知る

雲は出づるも心無く  再帰肯なう

惆悵たるかな春風   楚江の暮

鴛鴦は一双たるも   群を失して飛ぶ

2013年9月7日土曜日

漢詩 : 有朋遠来寓居

俳句や短歌ができない。頭が止まってしまっている。

何故に漢詩ならできるのだろう?

出来ばえはともかく作れる。

たぶん詩語集と平仄記号付きの絶句用の型紙があるからだ。

入門書の指示通りにやっているからできるのだろう。


平水韻 上平四支の韻


 題  有朋遠来寓居  朋あり遠きより寓居に来る


 夕陽籬影従陶詩   夕陽 籬影、陶詩を従え

 帰鳥啼猿落葉時   帰鳥 啼猿 落葉の時

 朋友吟来柴桑宅   朋友 吟じ来る 柴桑の宅

 欣欣温酒共囲棋   欣欣 酒を温め 共に棋を囲む






 夕陽に透けて籬(まがき)のシルエットができ 陶淵明の詩を思わせる

 ねぐらへ帰る鳥、林で親を呼ぶ猿の声、落葉が続いている時刻

 懐かしい友が 詩を吟じながら 田舎の宅に来てくれた

 わくわくした嬉しさに酒の燗を調えたらさあ向き合って碁盤を囲む。


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漢詩 : 秋夜偶成

懲りない、という姿勢で何度でも拙い作に耐えて漢詩作詩に挑戦しています。 

             七言絶句 平起式 韻は平水韻 十一尤

  秋夜偶成

  桂花香閣訪無由

  破壁月明暮雨収

  往事迢迢人已去

  孤燈多感不堪秋


2013年8月26日月曜日

2013年8月21日水曜日

俳句 : 薄闇に居る



迎え火を焚かず我あり薄闇に

俳句 : 夏の終わり




振り返るほど美しき夏の悔い


蜩は夜明けを待たじ夏逝きぬ 


蜩=かなかな

月下美人



 月下美人今宵顕になりし無知

   げっかびじん こよい あらわになりし むち



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2013年8月19日月曜日

俳句 : 盆過ぎて




 迎え火を焚かず我あり薄闇に


  むかえびをたかずわれありうすやみに


 なごり坂だらだらだらり盆の闇


  まごりざかだらだらだらりぼんのやみ


 盆過ぎの身のおとろへて庭潦


  ぼんすぎてみのおとろえてにわたずみ


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2013年8月16日金曜日

俳句 : ペルセウス座流星群の夜



 我が裡の胸走り火や星流る

 流れいく星に後れて吐息かな

 流れたる星に声あり夜の川

「胸走り火」は造語ではありません。

「胸走り」と「走り火」が合わさってできた近世の言葉だと思います。
辞書にもあります。





 星流るゝ見合うて失せし君の顔

 号泣のその余は知らじ天の川


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2013年8月13日火曜日

俳句 : 夏日から




 我を余所に蟻は列なす黙々と


 夏の夜の鏡に光る眼に見入る


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俳句 : 芋の句





客僧の食い残したる芋の端


芋は秋の季語ですが、俳句では里芋を指すことばです。


ここでは客僧は旅の僧でも他の寺に身を寄せる僧でもなく、
法事や法話に招かれた招待された僧侶を指しています。

接待する側はそれなりに気をつかっていろいろと出すのですが、
田舎のことゆえ不調法でもあり、また量の多さも度外れだったりで。

余す気の無い僧の方も持て余して詫びて箸を置くわけです。


そんな情景を詠んでみたつもりです。

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