2010年10月20日水曜日

無題  あるいは 66=33+33

熱帯夜に身を起こして

方形の薄闇 窓の方をみた


脇の下を伝う汗を感じながら

また目をとじると

大きな大きな夜空から

沈黙が下りてくる


何かが立ち去った

気配に

目を覚まし

それが何かを

言い当てるために

わたしはこうして 目をとじた


ことばでは言えず

足ではたどり着けない

場所へ

今さっき立ち去ったもの

それを

わたしは煙のように 追う



行かないでくれ!

と 叫んだ あの夜が

もういちど

深淵から漏れ出したように

あたりに広がってくる


みずの みずいろ

そらの そらいろ

彷徨うて 行くよ


と歌った

むかしのぼくの影が

駆け上った空

どこに

その透明な蝶は 舞うのか



泣くわたしのからだから

抜け出した百千の貴女のキスが

群舞する空は

どこ


裸足のくるぶしに

蛍ほどの灯り曳いて

亡者の貴女は

いまも居る

群星の映る水のそば


いつしか庭石に

腰を下ろして歌っている



33 たす 33

それは わたし


いちど死んで

同じだけ

もういちど生きた


立ち去ったのは

それは

わたし


残されたのは

ゼロ


66 たす ゼロ

ゼロになった

わたし



汗にまみれた

裸のこころ


生まれたばかりの

しろねずみ………




*


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