2013年10月11日金曜日

玄米粥



以粗糲為好餌

壮時些誤俗言中  壮時 些か誤る 俗言の中
嘗為以膏常作躬  嘗て膏を以って常に躬を作ると為す
糲粥晨炊得滋養  糲粥 晨に炊げば滋養を得て
十匙一覚賞天功  十匙 一覚 天功を賞す

わかいとき ちょっと うのみにしたものだ
あぶらみこそが からだを つくると
げんまいの かゆ あさに かしげば じようがついて
じゅっさじ はこべば ありがたさが わかる 


.


2013年10月8日火曜日

村社置酒


村社置酒

探歴鳴蝉暮鳥音
追踪白兎雪花林
星霜老去山河在
耳順座中霑酔深




2013年10月6日日曜日

賽社に過ぎる

街にも村にも秋の風情が見られ郷愁を掻き立てられます。
旅愁を題に漢詩を一首作りました。

賽社(さいしゃ)は秋の実りの収穫を感謝する祭。秋祭り。賽は「報いる」の意味。<賽社に過ぎる>秋祭りに立ち寄ること。客愁(かくしゅう)は旅の愁い。
家山(かざん)は故郷の山。
<意訳>

旅人の想いは遠く故郷へとつながって行きます。

秋の村祭りが賑やかに響いて村人たちは皆笑顔です。

楓の木にもう赤く色づいた葉を見つけました。

空には秋の叢雲がいっぱいでもう帰心一途になってしまいます。





.


2013年10月1日火曜日

平家公達流亡之図に題す



 平家公達流亡之図に題す

孤鞍 遠く望む 半輪の秋

風笛 商声 散じ未だ休まず

異境の紅顔 残鬢の客

故情 忘じ難きを 那邊にか流る


  秋の夜 半月の懸かる天を仰ぐ一騎

  強風が高い音を起て吹きつのる

  異郷を落ちいく若者の鬢はほつれて

  昔の恩情は忘れがたいものの、
  何処へと流れていくこの身なのか



.

2013年9月26日木曜日

漢詩 : 懐旧有感



人生有漏未離縁  ○○●●●○○
空讀遺篇不可眠  ○●○○●●○
一夜寒蛩弦月下  ○●○○○●●
孤山早暁在吟邊  ○○●●●○○


人生有漏なるも 未だ縁を離れず
空しく遺篇を讀んで 眠るべからず
一夜 寒蛩 弦月の下
孤山 早暁 吟邊に在り

【自注】

 旧友を思う詩をもうひとつ。

 最近死去した一人の詩人を想って作詩しました。
 孤独に耐え抜いたという意味で剛毅なひとでした。
 三冊余の詩集を残しました。
 その詩集を開いて読みながら思いは過去へ。

 ベトナム戦争など激動する世界を見つめながら
 まっすぐに生きて行きたいという願い、その志を記した詩の数々。

 世に広くは知られる詩人ではなかった。
 けれども私にはずっと忘れずにいたい人と作品であり続けるでしょう。

:人生有漏: 仏教のいう有漏とは存在の有限性、不完全性、無常性でしょう。
:蛩: こおろぎ、 寒
蛩で晩秋から冬の蟋蟀を表します。
:絃: いと、 楽器の弦。 月如絃は月がきわめて細くなっている情景。

さて出来栄えはどうだろう。平仄や二四不同ニ六対などはOKか。
前半二句で人の状況後半二句で自然光景をという構図にはなっているが。


漢詩人の友人の助言を得て手直ししたものです。

.


2013年9月25日水曜日

俳句と漢詩 : 夕暮れの灯の下で秋を思う

渺渺として美人は 客夢に残す  星は移り落托して 燈を挑ぐるも寒し  旧盟未だ尽きずして 江山杳かなり  懐に氷心を抱きて 長く一歎す

こんにちは。晴れた一日になりそうです。

俳句と漢詩を同じモチーフで作り並べるという試みをして見ました。
漢詩の平仄は合っているはずですが他は自信ないのです。
俳句は新涼という季語を使いました。

新涼には、新しい、新鮮なというニュアンスがありますが、体に感じる涼気に気付くときの感じがこめられた言葉だ思います。

 新涼や胸は古傷有りと云ふ

自分では日常に埋没して日を送っていても、
季節の変わり目のひんやりした肌触りに秋を感じるとき
様々な人生行路の出来事を思い返したりします。

胸に古傷、ではなく胸が「古傷有り」と云うのです。
皆さんはそうでないかもしれませんが、
一つや二つ秋風に沁みて思い出される傷がありませんか?

漢詩もそういう情景を作ってみたのです。

渺渺(びょうびょう)と云うのは広々としておぼろなこと。
客夢は異郷にあって見る夢、旅人の夢。カクムとも読む。
残すはザンスと読む。ノコスではない。
星移は星霜に同じ。年月のたつこと。
落托は落ちぶれること。
挑燈は灯をかかげること。
旧盟は古い誓い、約束のこと。男女の契りの言葉でもある。
江山はここでは故郷の山河のイメージとして置きました。
杳(よう)ははるかに。
氷心は真心、清い心、澄みきった心。

 晩燈愁思

 渺渺美人客夢に残す
 星移落托、挑燈寒し
 旧盟未だ尽きず、江山杳かなり
 懐抱氷心、長一歎