2013年7月23日火曜日

俳句 : 桔梗




 手紙あり押し花ありぬ盆じたく

   てがみありおしばなありぬぼんじたく

 桔梗やこゑと目と手とのみ憶ふ

   きちかうやこゑとめとてとのみおもふ



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2013年7月20日土曜日

俳句 : 夏から秋へ 或は ほのかな恋



 かなかなや里の夕日に犬痩せて

   かなかなやさとのゆうひにいぬやせて

 野の闇に蛍一つを見て往にき

   ののやみにほたるひとつをみていにき

 七夕にあてもなく来て泊りしか

   たなばたにあてもなくきてとまりしか

 着流しの肩動かさず蚊を叩く

   きながしのかたうごかさずかをたたく



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俳句 : かなかなとわたしと





世界で一番短い小説になっていないでしょうか?



  かな ゝ ゝ ゝ ゝ 我は女を如何せん

    かなかなかなわれはなんじをいかんせん




漢文を読むと偏のない字を偏のある字と同じに使っている例があります。

古い時代は同じ字で違う意味の同音語を表し字を共用していたのです。
汝を女と書くのも音が同じだったからです。それを使ってすこし遊びました。
どうにもままならないことが人間関係にはままありますね。



俳句 : 麦酒飲む



 麦酒飲む宵越の小さな悔いと

  ビールのむよいごしのちいさなくいと

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2013年7月18日木曜日

俳句 : 伊勢の旅 昔を今に



 甘咬みや雲の伊勢路の夏の恋

  あまがみやくものいせじのなつのこい

 跡隠す神は伊勢風青あらし

  あとかくすかみはいせかぜあおあらし

 海女語伊勢の島廻の人ひでり

  あまがたりいせのしまみのひとひでり


夏の旅、それはエロスに出会う旅であり、凄絶の過去に出会う旅であり、哀切と不在を感じる旅である。また吹く風も涌く雲も死者の記憶を争う旅でもある。個人と歴史の相克をたどる旅である他ない旅である。

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2013年7月17日水曜日

俳句 : 夏燕



 頬づえや寄る辺無き身に夏燕

   ほほづえやよるべなきみになつつばめ



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2013年7月16日火曜日

俳句 : 夏空、麦酒など







 水に月いち物も无き夏の空 

  みずにつきいちぶつもなきなつのそら


 まづ麦酒 吾が腹の虫寸に足らず

  まずびーるわがはらのむしすんにたらず


2013年7月15日月曜日

俳句 : 夏:夜の窓



 蛾の数の夜毎に増えて梅雨終わる

   がのかずの よごとにふえて つゆおわる

 蛾の羽音消して近づく夜の雨

   がのはおと けしてちかづく よるのあめ

 蛾を咥え守宮は横へ退き見えず

   がをくわえ やもりはよこへのき みえず


どれほど激しい降りでも夏の夜には雨はどこか優しい。
梅雨が明けてから夜窓辺へやってくる蛾が増えた。
大きなのもいます。
雨の降る音を聞いているとこころが休まるのを感じます。
今夜もやもりと静かな時間を過ごします。
やもりよ其処に居るのは知っているのだよ。
ぼくもお前からは見えないわけだ。
除虫菊製の蚊取り線香もまっすぐな煙を昇らせています。

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2013年7月14日日曜日

俳句 : 海の旅


 油照り神島を告げし妻のこと

   あぶらでり かしまを つげし つまのこと

 大日女南風の神島に照り渡る

   おおひるめ まじの かしまに てりわたる

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tabi tanabe kashima