2013年8月13日火曜日

俳句 : 失ったもの




 大蓮を大蓮と云う今日炎天下

  おばつじを おおはすという きょうび えんてんか


 路上にゐる汗に濡れたる黒頭

  ろじょうにいる あせにぬれたる くろあたま



 河内では今日(こんにち)を「きょうび」と云う。


 東大阪市大蓮。昔は「おばつじ」と云った。いまは「おおはす」
 漢字表記は変わらないが、呼び変えたのだ。


 「おばつじ」は大蓮の正確な読み方から出ている。
 元来は「おおはちす」と呼んだのであろう。
 「おおはちす」が「おおはつし」さらに「おはつじ」と発音が変わっていった。
 河内にはこういう音変化が多い。

 矢作(やはぎ)が「やわぎ」さらに「やうぎ」「ようぎ」
 今の「八尾木(やおぎ)地元は今もヨーギと呼ぶ」である。

 八尾市の八尾は物部氏の一族である矢作(やはぎ)氏から来ている。
 あ、これは自説ですが(笑)別の説もあります。


 このオバツジは当麻寺の伝承に寄り添う言い伝えがあります。
 当麻寺に伝わる当麻曼荼羅を織り上げた中将姫の伝説です。

 「当麻曼荼羅」 

 その中将姫はこの「大蓮」の池の蓮が立派なのを知って通ってきて採り、
 ついにあの曼荼羅を織り上げる祈願を果たしたという。


 その話を教えてくれた友の所在を私は失ったままです。

 夏の暑い日にこの思い出が蘇るのも不思議です。

 名前が「おおはす」と変えられても私の思い出は変わりません。


 汗だらけの黒い頭で私と一緒に西瓜に食らい付いた遠い日々の友の顔も失いません。




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