紺の衣の星座となりしいのこづち
ひがん花さなかの恋の間々揺るゝ
残照や遠ざかりつゝ曼珠沙華
庭の露まがほ正しき子猫の目
からす瓜薄れ日のごと消え残る
魂の仕事の秋か歌劇果つ
声なくも声限りなき秋の風
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踏鞴火や深更けて村下えぼし西風
七箇まで星を滲ませ遅き春 
わが家は春やむかしの花のなか 
丘のうへ妻はそよかぜ桃の花 
丘に立つ妻あたゝかき風とゐる
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くらきうつはしづもる秋やへんろ杖 
肩越しの秋抱けばほゝにルネ 
ふりむけば湖国の秋ひかりしづかな 
たっぷりと真水を抱いてしづもれるくらき器を近江と言へり 河野裕子 
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短歌: ゆうぐれに 2 ← 縦書きリンク
岨みちにかけて照る日の傾きぬ荒れゆく里に秋風の色 
そばみちにかけててるひのかたぶきぬあれゆくさとにあきかぜのいろ
 
 
 
            
        
          
        
          
        
あの翅で海わたるのよ 庭に秋
海渡る恋よ ルネ 蝶も同じ
ルネに恋しててわたし? 渡る蝶
なお思ひそ  髪掻きあぐるルネに秋
固有時を眠れる眉根 ルネの秋
カルテシアン 図形に秋のランプの夜
 
 
 
            
        
          
        
          
        
短歌:斧の刃 ←リンク
斧の刃にか黒く深き空映る息かけて告ぐ木は倒れたり
森昏く濡るゝを抜け来此処に座す杣人の膳酒盡きぬ夜
土間に置く斧の刃冴えて更けゆく夜揃えし靴に蟋蟀上る
 
 
 
            
        
          
        
          
        
駅ひとつ距てた住所思う秋 
旅は果てこの紅葉の大樹かな
葉を降らす大樹に寄りて眼鏡拭く
涸井戸にひかる小秋を見つけたり
夕闇を拾いつ行きつ母の栗