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スクラップ帖:
世界一美しい恋愛小説
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2003・12・6 SAT 世界一美しい恋愛小説。
師走になりました.
この頃になるとなんとなく手に取って読み返したくなる本が私にはあります。
(べつに季節とは全然関係ないのですが。)
矢川澄子著「わたしのメルヘン散歩」(ちくま文庫)です。
児童文学者で外国の童話や絵本の訳もたくさんしている矢川さんが、
「本の中の子供」を紹介するという形で、いろんな作品を取り上げています。
その中の「ねずみの奥さん」(ルーマー・ゴッデン作)を語る一章はとりわけ印象深いものです。
以下、*印から*印まで、矢川さんの文章を転記します。(本文75~77頁。)
*
主人公はもちろん、一ぴきの奥さんねずみ、
ごくありふれた家ねずみの♀です。 このねずみは見かけといい、そのいとなみといい、
とりたててほかの家ねずみと変ったところはありません。
けれどもどこか他のねずみとはちがいます。 何かが足りないという気がしているのです。
その何かが何であるかは奥さん自身にもわかりません。
旦那さんねずみの方は、これにひきかえ、目のまえのこと、
日々の餌のことしか念頭にありません。
このうえ何が不足なんだね?
時々じっと窓の外をみつめていたりする奥さんに、旦那さんねずみはたずねます。
なぜチーズのことを考えないんだね? (中略)
あるときこの家に一羽の鳩が加わります。
別世界からやってきて人間の手にとらえられたこの鳩は、
窓辺のせまい鳥籠にとじこめられ、力なくつばさを閉じたまま、
羽ばたきもできず、餌さえ受付けません。
はじめのうちはおそるおそる、餌の豆をぬすみに鳥籠へ出入りするようになった奥さんは、
いつしかこの囚われの鳩の身を案ずるようになります。
鳩にとって奥さんの存在は救いであり、慰めです。
鳩は戸外の山野をのびのびととびまわる自分たちの生活を語ります。
でも、とぶってどういうこと? ねずみの奥さんにはそれさえもわかりません。
鳩はあきれて、やって見せようとして、たちまち籠の枠にぶつかり、
ふたたび力なくうなだれます。
ねずみの奥さんはなぜかはわからぬままに、深く心を動かされます。
それからまもなく、ねずみの奥さんにはかわいい赤んぼがたくさん生まれ、
せわしない明け暮れがつづき、ようやく一段落したある日、
旦那さんの留守のひまに久方ぶりに鳩のところへ行ってみると、
鳩はしばらく会わないうちにはげしい憔悴ぶりで、まちかねたように
奥さんを抱きしめキスしながら、もう来てくれないのかと思った、とくりかえします。
巣に帰った奥さんは、先に帰り着いていた旦那さんにひどく叱られ、耳をかまれます。
その晩、ねずみの奥さんは眼が冴えて眠れません。
どう考えても鳩はあんなところに閉じ込められているべきではないのです。
あかるい静かな月の夜、奥さんは旦那さんと子供たちのすやすや眠る巣からそっとぬけだし、
鳩のところへ行くと、籠の戸の掛金にとびつき、必死でかじりついて戸をあけてやるのに成功します。
籠から脱出した鳩は、もはや奥さんには目もくれず、
つばさをひろげる勢いで奥さんをひっくり返らせたなり、
明け放しの窓から木々の彼方へとびさってゆきます。
わかったわ、あれがとぶってことなのね。
のこされた奥さんは窓の彼方を仰ぎながらつぶやきます。
これからはもう誰もわたしに
森や丘や雲のことを語ってくれるひとはいないのだ。
どうすればわすれずにいられるだろう。
ふたたび夜空を見上げた奥さんの目に、今度はまたたく星影がうつります。
するとそれが奥さんにはそれほど遠くはない、ふしぎでもないもののように思えてくるのです。
星影は鳩におそわったのではない、未知の境にありながら奥さんが自分自身の目でみつけたものです。
奥さんの胸にひとつの矜りがめばえます。 (後略)
*
私は、この「ねずみの奥さん」は、世界で一番美しい恋愛小説だと思います。
もちろん原作は6才の子供でも読めるお話です。
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**これは日記です。書いたのはひとりの詩人で年下の敬愛する友人でしたが今年ひっそりと泉州の府営住宅で亡くなりました。ホムページの日記の中から一つ切り抜いて憶えておきましょう。ここを読んでまた貴方がちょっと近くなりましたから。(M.Y.)
詩というものは、自由な魂が、囚われの自分の身の上をではなく、自由の証であったものごとへの、憔悴するような思いを、復仇でさえある志を、言葉の端々にみなぎらせて歌うもの、なのかもしれない。
貴方はここにも寄物陳思を仕掛けておいたのか。確かに貴方にとっての詩はそうだったのに違いない。
その前後の自作句を書き留めて追悼に代えておきます。
草丈を気にし焚く火や初迎へ
見知らざる死の生り出でて夏の闇
落着かず笑ふ死者あり半夏生
蟻死して照る日に小蟻集(たか)るかな
気の早き花火聞こえてあと静か
打ち水に石よりもとな蝶乱(さや)ぐ
七夕も過ぎて伝(つて)なき忘れ傘
測るがに渓へ没する夏の蝶
搔いとれば指に明るむ蛍の火
大日女(ひるめ)南風(まじ)の神島に照り渡る
蛾の羽音消して近づく夜の雨
水に月いち物も无き夏の空
頬づえや寄る辺無き身に夏燕
海女語(あまがたり)伊勢の島廻(み)の人日照り
跡隠す神は伊勢風青あらし
麦酒飲む宵越の小さな悔いと
かなゝゝゝゝ我は女(なんじ)を如何せん
野の闇に蛍一つを見て往にき
かなかなや里の夕日に犬痩せて
桔梗やこゑと目と手とのみ憶ふ
暁の虹君と旅寝の日は果てゝ
虹見ゆと教えし君の小鼻かな
雲の峰あそこが俺の行方なら
その後の寂しさ知るや遠花火
夏の夜の鏡に光る眼に見入る
我を余所に蟻は列なす黙々と
号泣のその余は知らじ天の川
流れいく星に後れて吐息かな
我が裡の胸走り火や星流る
盆過ぎの身のおとろへや庭潦 潦=たずみ
迎え火を焚かず我あり薄闇に
蜩(かなかな)は夜明けを待たじ夏逝きぬ
振り返るほど美しき夏の悔い
去(い)ぬる児も流るゝ星を追ふやうに
蜥蜴去りし地面に深き罅有りき
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今見むと山百合見むと歌に詠み山百合も見ずみうせしやきみ
椅子の絵に愛を残して消えにしやムゼオの扉閉まるな暫し
旅ゆくは吹きて止まざる風の中無縁の愛の終きゆく世界
2013/7/7 作る。
貴方の訃報を聞くことなく貴方を想っての作が図らずも追悼の歌になっておりました。
2013年11月24日日曜日
最近の短詩
つまの掌に何を載せやう秋の山 つまのてになにをのせようあきのやま
萩摘むや峠の風に古希を云ふ はぎつむやとうげのかぜにこきをいう
茱萸一つ燈一つ母ひとり ぐみひとつともしびひとつははひとり
化粧皿の夜更けに映えし茱萸の朱 パレットのよふけにはえしぐみのあか
ふたしかに吾又ありし秋の虹 ふたしかにわれまたありしあきのにじ
朝粥をつかふ吾身や秋の虹 あさがゆをつこうわがみやあきのにじ
秋の虹わが一粥に起き仰ぐ あきのにじわがいっしゅくにおきあおぐ
酌むほどの月の遠さや秋終わる くむほどのつきのとおさやあきおわる
鳥兜最後に暮るヽ村はづれ とりかぶとさいごにくるるむらはずれ
たはむれし百野草の夜や指のあを たわむれしつゆくさのよやゆびのあお
破殻の制御さるる身雨そぼろ われからのせいぎょさるるみあめそぼろ
道すがら 野菊の風情と云はれたる君を憶ひぬ ひとむら咲けり
痛みもちて物思ふ道に しろじろと野菊の咲けば われきはまれり
生涯を望まば石工朱き茱萸 しょうがいをのぞまばいしくあかきぐみ
秋風や耳立つ驢馬の瞑目す あきかぜやみみたつろばのめいもくす
巡礼や聖堂脇の秋桔梗 じゅんれいやせいどうわきのあきぎきょう
星月夜すべて聖者の坂のうへ ほしづきよすべてせいじゃのさかのうえ
屋根に居て猿公黙し秋日落つ やねにいてえんこうもくしあきびおつ
落日を背に研ぐ刃物天高し らくじつをせにとぐはものてんたかし
珈琲を淹れ窓を開け鵯と居る コーヒーをいれまどをあけひよといる
南天も鵯もまっかに染むるかな なんてんもひよもまっかにそむるかな
葦の火の美しき理由問はざりき あしのひのうつくしきわけとわざりき
鹿の声聞きこころ鋭し夜の冥らさ しかのこえききこころとしよのくらさ
鹿鳴きぬ己が性の限りをば しかなきぬおのれがさがのかぎりをば
ノォトに散るいろはにほへと秋の風 のぉとにちるいろはにほへとあきのかぜ
グラノォラミルクが好きな秋の風 「グラノォラミルク」がすきなあきのかぜ
永遠の秋と知りつつ本を読む えいえんのあきとしりつつほんをよむ
接吻の背後に岬木犀花 せっぷんのせなかにみさきもくせいか
老ひの目に様子が優し衣被 おいのめにようすがやさしきぬかつぎ
芋食はむ燈を近うして本読まむ いもくわんひをちこうしてほんよまん
頃合ひのさまざまにして衣被 ころあいのさまざまにしてきぬかつぎ
メール打つ片手にするは衣被 メールうつかたてにするはきぬかつぎ
後朝の事は往昔ぞ家宅を賣る きぬぎぬのことはむかしぞいえをうる
夢魔愉楽は蛩の音を知らず ナイトメアゆらくはむしのねをしらず
栴檀の実や花の季のなほ胸中に せんだんのみやはなのきのなおむねに
えのこ草鼡浄土はどこら辺 えのこぐさねずみじょうどはどこらへん
鬼薊つくづく知んぬ己が無知 おにあざみつくづくしんぬおのがむち
人倫といふ章にて息みぬヘーゲルの現象学を昔読みしが
論理といふ固き道をば辿れども君が目を欲り本を閉じにき
後ろ向きに小舟を漕ぐとひとはいふ昔ばかりを懐ふな我も
椿の実 独り豊かに時経てば つばきのみひとりゆたかにときたてば
追ふほどもなし入り出づる秋のてふ おうほどもなしいりいずるあきのちょう
追ふほどの所用もあらず秋のてふ おうほどのしょようもあらずあきのちょう
追ふこともせぬに手に触るあきのてふ おうこともせぬにてにふるあきのちょう
和鋏や夜なべの月の窓に冴え わばさみやよなべのつきのまどにさえ
ひと恋し霜照る月に己が影 ひとこいししもてるつきにおのがかげ
萩摘むや峠の風に古希を云ふ はぎつむやとうげのかぜにこきをいう
茱萸一つ燈一つ母ひとり ぐみひとつともしびひとつははひとり
化粧皿の夜更けに映えし茱萸の朱 パレットのよふけにはえしぐみのあか
ふたしかに吾又ありし秋の虹 ふたしかにわれまたありしあきのにじ
朝粥をつかふ吾身や秋の虹 あさがゆをつこうわがみやあきのにじ
秋の虹わが一粥に起き仰ぐ あきのにじわがいっしゅくにおきあおぐ
酌むほどの月の遠さや秋終わる くむほどのつきのとおさやあきおわる
鳥兜最後に暮るヽ村はづれ とりかぶとさいごにくるるむらはずれ
たはむれし百野草の夜や指のあを たわむれしつゆくさのよやゆびのあお
破殻の制御さるる身雨そぼろ われからのせいぎょさるるみあめそぼろ
道すがら 野菊の風情と云はれたる君を憶ひぬ ひとむら咲けり
痛みもちて物思ふ道に しろじろと野菊の咲けば われきはまれり
生涯を望まば石工朱き茱萸 しょうがいをのぞまばいしくあかきぐみ
秋風や耳立つ驢馬の瞑目す あきかぜやみみたつろばのめいもくす
巡礼や聖堂脇の秋桔梗 じゅんれいやせいどうわきのあきぎきょう
星月夜すべて聖者の坂のうへ ほしづきよすべてせいじゃのさかのうえ
屋根に居て猿公黙し秋日落つ やねにいてえんこうもくしあきびおつ
落日を背に研ぐ刃物天高し らくじつをせにとぐはものてんたかし
珈琲を淹れ窓を開け鵯と居る コーヒーをいれまどをあけひよといる
南天も鵯もまっかに染むるかな なんてんもひよもまっかにそむるかな
葦の火の美しき理由問はざりき あしのひのうつくしきわけとわざりき
鹿の声聞きこころ鋭し夜の冥らさ しかのこえききこころとしよのくらさ
鹿鳴きぬ己が性の限りをば しかなきぬおのれがさがのかぎりをば
ノォトに散るいろはにほへと秋の風 のぉとにちるいろはにほへとあきのかぜ
グラノォラミルクが好きな秋の風 「グラノォラミルク」がすきなあきのかぜ
永遠の秋と知りつつ本を読む えいえんのあきとしりつつほんをよむ
接吻の背後に岬木犀花 せっぷんのせなかにみさきもくせいか
老ひの目に様子が優し衣被 おいのめにようすがやさしきぬかつぎ
芋食はむ燈を近うして本読まむ いもくわんひをちこうしてほんよまん
頃合ひのさまざまにして衣被 ころあいのさまざまにしてきぬかつぎ
メール打つ片手にするは衣被 メールうつかたてにするはきぬかつぎ
後朝の事は往昔ぞ家宅を賣る きぬぎぬのことはむかしぞいえをうる
夢魔愉楽は蛩の音を知らず ナイトメアゆらくはむしのねをしらず
栴檀の実や花の季のなほ胸中に せんだんのみやはなのきのなおむねに
えのこ草鼡浄土はどこら辺 えのこぐさねずみじょうどはどこらへん
鬼薊つくづく知んぬ己が無知 おにあざみつくづくしんぬおのがむち
人倫といふ章にて息みぬヘーゲルの現象学を昔読みしが
論理といふ固き道をば辿れども君が目を欲り本を閉じにき
後ろ向きに小舟を漕ぐとひとはいふ昔ばかりを懐ふな我も
椿の実 独り豊かに時経てば つばきのみひとりゆたかにときたてば
追ふほどもなし入り出づる秋のてふ おうほどもなしいりいずるあきのちょう
追ふほどの所用もあらず秋のてふ おうほどのしょようもあらずあきのちょう
追ふこともせぬに手に触るあきのてふ おうこともせぬにてにふるあきのちょう
和鋏や夜なべの月の窓に冴え わばさみやよなべのつきのまどにさえ
ひと恋し霜照る月に己が影 ひとこいししもてるつきにおのがかげ
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