十月満ち來る潮に風の声
又ひとり去ぬる有り 秋 町工場
からす瓜己ふたしかに夕暮れぬ
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旅支度する気短な神の傍
この衣が母を舞わせて立田姫
目も口もいっぱいにして秋終る
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秋の夜の身を焼き甦り去にしもの
寒さ著て歩み入りゆく雄の祭り
火柱の立つや願ひの夜は顕
秋祭り足細妻の交じりいる
群衆も火も知らぬ間の星の冷え
飾られし会いと別れも秋祭り
縁日の秋のゆふ日は昨日いろ
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不愉快とある背表紙を買ふて秋
饕餮は偏食ばかり熟し柿
数独が一題解けた柿の種
あの逢ひはほめきの紅さ寺の秋
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紺の衣の星座となりしいのこづち
ひがん花さなかの恋の間々揺るゝ
残照や遠ざかりつゝ曼珠沙華
庭の露まがほ正しき子猫の目
からす瓜薄れ日のごと消え残る
魂の仕事の秋か歌劇果つ
声なくも声限りなき秋の風
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踏鞴火や深更けて村下えぼし西風
七箇まで星を滲ませ遅き春
わが家は春やむかしの花のなか
丘のうへ妻はそよかぜ桃の花
丘に立つ妻あたゝかき風とゐる
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くらきうつはしづもる秋やへんろ杖
肩越しの秋抱けばほゝにルネ
ふりむけば湖国の秋ひかりしづかな
たっぷりと真水を抱いてしづもれるくらき器を近江と言へり 河野裕子
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岨みちにかけて照る日の傾きぬ荒れゆく里に秋風の色
そばみちにかけててるひのかたぶきぬあれゆくさとにあきかぜのいろ
あの翅で海わたるのよ 庭に秋
海渡る恋よ ルネ 蝶も同じ
ルネに恋しててわたし? 渡る蝶
なお思ひそ 髪掻きあぐるルネに秋
固有時を眠れる眉根 ルネの秋
カルテシアン 図形に秋のランプの夜