龍昇る 龍穴に出入りの小商人
りゅうのぼる あなにでいりの こあきなひ
山背のやま笑う 風明るんで
やましろのやまわらう かぜあかるんで
蕗の薹 木津川辺の朝餉かな
ふきのとう きづがわへんの あさげかな
春の風京に向かってのる電車
はるのかぜ きょうにむかって のるでんしゃ
卒業や居ぬ児も共に並ぶあり
そつぎょうやゐぬこもともにならぶあり
海去りき 百花に相別れ卒業す
うみさりき ひゃっかに わかれそつぎょうす
春暁 孟浩然
春眠不覚暁 春眠暁を覚えず
處處聞啼鳥 處々啼鳥を聞く
夜来風雨聲 夜来風雨の聲
花落知多少 花落ちるを知る 多少ぞ
【潜魚庵】
春の子ザメニ只ウツウツト
西ヤ東ト鳥サエヅルヨ
夜ノ嵐ニ雨降リ出テ
余程散ラサン夜ノ花
【井伏鱒二】
ハルノネザメノウツツデ聞ケバ
トリノナクネデ目ガサメマシタ
ヨルノアラシニ雨マジリ
散ツタ木ノ花イカホドバカリ
【松下緑】
ネムタイ朝ノユメゴコチ
チュンチュン雀モ鳴イテイル
昨夜ヒトバン雨風アレタ
花モヨッポド散ッタロウ
【拙 訳】
春の眠りの覚める間も
いたるところに鳥の声
ひと夜はげしや 風に雨
花はすっかり散ったやら
水響く雪解の渓峪に射すひかり
みづ ひゞく ゆきげのたにゝ さすひかり
夫婦とも「喋らぬ方が良い」夫婦
女子会に正装で行く妻の理由(わけ)
薄闇に知る白き梅 香気充ち
激動の日々荘厳す 白き梅
倒れ逝きし若者思う 夜の梅
..............1911、2011、多くの若者が革命に命を捧げたのだった。
梅花という題詠に激動の世界を配して何が見えるかやってみました。
蕪村とは遠く隔たるけれどこれもまた梅花かと。
逝きし若者に多数の女性が含まれていたことが白梅を思わせました。
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蝋梅は今日もふたりの薫る庭
らうはいは けふも ふたりの かほる には
後添いのツレとのふたり暮らしあといか程続くのだろうか。
平安に安堵する気持ちといつ終わっても変ではない年齢や身辺。抱負と不安とがある日々が平然と過ぎていく。
辛夷咲く通りに棲めり 亡き妻と
こふしさく とほりにすめり なきつまと
貧しかった暮らし。住むというほどの立派さも無くて。
近くの家の辛夷の樹に因んで「辛夷通り」と名付け、
何も無さに抗していたのが若さという救いだったのかも。
纏めてる指の若さや桜餅
まとめてる ゆびのわかさや さくらもち