母の居ぬ少童の目や冬の海
雲分かれ射し照る冬日遠き湖
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虹の背にこの子預けて往こうかな
虹は夏の季語だったかな
秋は何処見つけて見せて晴れた日に
夜なべあかき心のまゝ二人かな
耳ふたつ夜風の秋にしろく添え
秋あはれだらりと垂れて夜の舌
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十月満ち來る潮に風の声
又ひとり去ぬる有り 秋 町工場
からす瓜己ふたしかに夕暮れぬ
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旅支度する気短な神の傍
この衣が母を舞わせて立田姫
目も口もいっぱいにして秋終る
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秋の夜の身を焼き甦り去にしもの
寒さ著て歩み入りゆく雄の祭り
火柱の立つや願ひの夜は顕
秋祭り足細妻の交じりいる
群衆も火も知らぬ間の星の冷え
飾られし会いと別れも秋祭り
縁日の秋のゆふ日は昨日いろ
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