2006年12月5日火曜日

 『雪そして独りの時間』 

2006/12/05



    『雪そして独りの時間』

             --老残抄のつもりで


  融けてしまったチーズの中に
  ぼくの 過ぎ去った恋がある

  拭き残しのある ガラス窓に
  ぼくの失った 想い出が 輝いている

  ぐつぐつ煮える ポトフの中で
  ぼくの指先が 湯気のむこう 揺らめいて

    - その指先で ぼくは 君の乳房にふれていた…
      夢見た地平線 君の白い腕が
      目覚めた ぼくの前に 長く延びていた -

  融けてしまったチーズの匂いが
  ぼくの落とした 卵形の時間

  枯れ草から 飛び出す 子雀の
  一打ちの羽音に
  去った恋  哀しみ そして 勇気が舞い上がる

  天からゆっくりと 雪が降り
  地上が せり上がっていく
  冬のま昼

  ぼくは 想い出をたどるように
  まどろむ 猫の背を 撫でている


                 2006/12/05 

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