2006年11月7日火曜日

小春日和の今日の空



 静かな穏やかな暖かい晩秋である。
 爆竹とロケット花火で脅されたお猿さんたちも来ない。
 静かにSNSの文献を調べ、ココプラに書き込み、お茶を飲み、
 仕入れや販売や発送の報告を待つだけでよい、佳日である。
 機械トラブルの報告が入った一昨日が遠く感じるほど、穏やかだった。
 外に出てみると、空が蒼い。高くなって広々している。
 どこかで見たような気持ちにさせるこの空の懐かしい色。
 ぼくの好きな俳人の一人、
 与謝野蕪村の句にこんな空を詠んだ句があったな。

 烏賊のぼり 昨日の空の 在り処

 「イカノボリ きのうのそらの ありどころ」

 凧をイカとかイカノボリという在所がある。
 凧揚げとは言わないのだ。

 今見ている空は確かに今のこの場で見あげている空なのだ。
 だが、空に高く上がっている凧を見ていると、
 子どもの頃の凧が重なってくる。

 あの頃の凧の周りに蒼く澄んでいた空とこの空とは同じ空…
 そう心の底で思いたがる自分が居る。いや、じっと見れば、
 こうして見ている自分はあの頃の自分とどこが違うのだ、
 昨日のことも十年前のことももっと前も同じ空、同じわたし。

 昨日の空の在り処、自分の胸の底、この蒼い空。遠い昔。
 透き通って蒼いのはわたしが映る空の中、
 ますます凧は小さく高く上がっている。

 この郷愁をどうしよう。蕪村は昨日の空と指さすことで
 己が郷愁のくるめきを、そっと虚空に投げ返す…
 

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