かき氷 天下とるぞと云ったきみ
刃々と鳴く蝉背にし別れた日
立秋か  拭き上げたグラスが昏い
 
 
 
            
        
          
        
          
        
ナガサキの坂のぼり来る 雲ばかり
灼熱が知らぬわたしを灼かんとす
長崎の日がな響(とよ)もす声なき声
あらぬ光あらぬ影視よ 原爆忌
 
 
 
朝  ほととぎすないて いってき  ひかり おつ
昼  かげろふのみち き ははとの ひるげなり
夕  ほしでんでん だんちの なつの くれかかる
 
 
 
大願と手を日に曝す原爆忌
凡夫われ戦さ世にあり賜べ平和
観音の掌に烈日を返さばや
 
 
 
二枚目のあの朋はどこ蝉時雨
崩おれる雲見て居りし丘のうへ
短夜や所在を知らぬ朋のあり
「十八歳になったら、間違いなく僕は…」と
書いた朋友宛ての手紙の下書きが残っている
朋に寄す一文残し海の夏
 
 
 
            
        
          
        
          
        
          
        
  手のひらで ほたる袷せて 見せに来て
         つ ま  すさ
  折り紙で亡妻と遊ぶや 短き夜
                  て ふ
  星月夜 はゞたき覚めし 胡蝶の夢
 
 
 
  明けもどろ銀河飲んだる茅渟の海
  燃え尽きし星吸ひ廻るわが銀河
  君は何処ぼくは銀河の岸に呼ぶ