2013年10月18日金曜日

秋思


垂白文章猶未成      幽襟独嘯佇蓬生      凄風敲戸帰鴉乱      桑葉翩翻揺月明


























秋思

    垂白文章猶未成

    幽襟独嘯佇蓬生

    凄風敲戸帰鴉乱

    桑葉翩翻揺月明

    垂白ナルモ文章猶未ダ成ラズ

    幽襟独リ嘯イテ蓬生ニ佇ズム

    凄風戸ヲ敲キ帰鴉乱レ

    桑葉翩翻タリ 月明ニ揺ル

垂白 髪が白くなっていること 老いを象徴
文章 「文章は経国の大業、不朽の盛事なり」「文は人なり」
幽襟 胸に秘めた深い思いのこと
蓬生 よもぎふ 奥まった処の意味で使う
凄風 冷たく吹き荒ぶ風
帰鴉 巣に帰るカラス
桑葉 桑の樹とその枝葉

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2013年10月11日金曜日

玄米粥



以粗糲為好餌

壮時些誤俗言中  壮時 些か誤る 俗言の中
嘗為以膏常作躬  嘗て膏を以って常に躬を作ると為す
糲粥晨炊得滋養  糲粥 晨に炊げば滋養を得て
十匙一覚賞天功  十匙 一覚 天功を賞す

わかいとき ちょっと うのみにしたものだ
あぶらみこそが からだを つくると
げんまいの かゆ あさに かしげば じようがついて
じゅっさじ はこべば ありがたさが わかる 


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2013年10月8日火曜日

村社置酒


村社置酒

探歴鳴蝉暮鳥音
追踪白兎雪花林
星霜老去山河在
耳順座中霑酔深




2013年10月6日日曜日

賽社に過ぎる

街にも村にも秋の風情が見られ郷愁を掻き立てられます。
旅愁を題に漢詩を一首作りました。

賽社(さいしゃ)は秋の実りの収穫を感謝する祭。秋祭り。賽は「報いる」の意味。<賽社に過ぎる>秋祭りに立ち寄ること。客愁(かくしゅう)は旅の愁い。
家山(かざん)は故郷の山。
<意訳>

旅人の想いは遠く故郷へとつながって行きます。

秋の村祭りが賑やかに響いて村人たちは皆笑顔です。

楓の木にもう赤く色づいた葉を見つけました。

空には秋の叢雲がいっぱいでもう帰心一途になってしまいます。





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2013年10月1日火曜日

平家公達流亡之図に題す



 平家公達流亡之図に題す

孤鞍 遠く望む 半輪の秋

風笛 商声 散じ未だ休まず

異境の紅顔 残鬢の客

故情 忘じ難きを 那邊にか流る


  秋の夜 半月の懸かる天を仰ぐ一騎

  強風が高い音を起て吹きつのる

  異郷を落ちいく若者の鬢はほつれて

  昔の恩情は忘れがたいものの、
  何処へと流れていくこの身なのか



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2013年9月26日木曜日

漢詩 : 懐旧有感



人生有漏未離縁  ○○●●●○○
空讀遺篇不可眠  ○●○○●●○
一夜寒蛩弦月下  ○●○○○●●
孤山早暁在吟邊  ○○●●●○○


人生有漏なるも 未だ縁を離れず
空しく遺篇を讀んで 眠るべからず
一夜 寒蛩 弦月の下
孤山 早暁 吟邊に在り

【自注】

 旧友を思う詩をもうひとつ。

 最近死去した一人の詩人を想って作詩しました。
 孤独に耐え抜いたという意味で剛毅なひとでした。
 三冊余の詩集を残しました。
 その詩集を開いて読みながら思いは過去へ。

 ベトナム戦争など激動する世界を見つめながら
 まっすぐに生きて行きたいという願い、その志を記した詩の数々。

 世に広くは知られる詩人ではなかった。
 けれども私にはずっと忘れずにいたい人と作品であり続けるでしょう。

:人生有漏: 仏教のいう有漏とは存在の有限性、不完全性、無常性でしょう。
:蛩: こおろぎ、 寒
蛩で晩秋から冬の蟋蟀を表します。
:絃: いと、 楽器の弦。 月如絃は月がきわめて細くなっている情景。

さて出来栄えはどうだろう。平仄や二四不同ニ六対などはOKか。
前半二句で人の状況後半二句で自然光景をという構図にはなっているが。


漢詩人の友人の助言を得て手直ししたものです。

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